皆さん、こんにちは。いよいよ師走。今年も一年、ご愛読ありがとうございました。年末に向けて、くれぐれもご自愛ください。

かわら版では日常会話の中に含まれている仏教用語をご紹介しています。知らず知らずのうちに使っている仏教用語。それだけ日本人の生活に溶け込んでいるということです。

普通の年末が戻ってきました。繁華街の人出も多く、コロナ禍の最中はガランとしていた映画館なども大盛況です。どこもかしこもガランドウのようだったのが噓のようです。と言って使った「ガランドウ」は「伽藍堂」と書く仏教用語です。「ガランとしている」の「ガラン」も「ガランドウ」から派生した表現です。

「伽藍堂」はお寺の建物を意味する「伽藍堂宇(がらんどうう)」の略です。お寺の本堂などは大きさの割には中にあまり物が置かれていないので、「がらんどう」は大きい空間や、部屋や建物の中にあまり人がいない状態、物がない状態を表す日常用語になりました。

古代インドでは出家遊行者が集まって修行する清浄な場所のことをサンスクリット語で「サンガーラーマ」と言いました。「サンガ」と「アーラーマ」の合成語です。

「サンガ」は「和合」を意味し「人々の集まり」「仲間」のことであり、言わば仏教教団そのものを表していました。漢字に音訳されて「僧伽(そうぎゃ)」と書きますが、お坊さんのことを「僧」と言うようになったのも「サンガ」に由来します。「アーラーマ」は「休息」または「休息の場所」を意味し、漢字に音訳された「藍摩」
と書きます。そして「僧伽」と「藍摩」が合体して「僧伽藍摩(そうぎゃらんま)」です。

「僧伽藍摩」がやがて短縮されて「僧伽藍(そうぎゃらん)」となり、さらに略されて
「伽藍(がらん)」という言葉が日本に伝わりました。

お寺にはいろいろな種類の建物がありますが、正式には七つの建物が揃うことが必要だと言われています。どの建物を七堂伽藍として数えるかについては宗派によって異なります。一般的な七堂伽藍は、金堂・講堂・鐘楼・経蔵・僧房・食堂・仏塔です。禅宗の場合は、山門・仏殿・法堂・庫裡・僧堂・浴室・東司を指します。

この七つ全てが揃ったお寺のことを「七堂伽藍」と呼びます。これが転じて、たくさんの塔頭寺院や建物を擁する大寺院の別称として「七堂伽藍」と表現するようにもなりました。

七堂伽藍が揃っている有名なお寺は、例えば臨済宗妙心寺派の大本山妙心寺です。京都市市右京区花園にあり、安土桃山時代から江戸時代に建てられたものが多く、近世褝宗寺院の典型的伽藍配置を示しています。

曹洞宗の永平寺も七堂伽藍です。福井県吉田郡永平寺町にあり、道元禅師によって開創
され、現在でも曹洞宗の修行僧(雲水)の修行場となっています。

普段は「がらんどう」の「伽藍」ですが、法要などがあると大勢の人がお堂の中に入り、礼拝、読経します。お堂の中に人が溢れるほどに入っている状態は「満堂(まんどう)」と言います。「満堂」になるような機会にはなかなか遭遇しませんが、そういう場合にはお坊さんが「御満堂ありがとうございます」とおっしゃるはずです。

コロナ禍も終わった今年の年末は、お寺もご満堂になるかもしれませんね。それでは皆さん、よいお年をお迎えください。来年もよろしくお願いいたします。