皆さん、こんにちは。立春間近とは言え、冬真っ盛りです。寒い日が続きます。くれぐれもご自愛ください。

かわら版では日常会話の中に含まれている仏教用語をご紹介しています。知らず知らずのうちに使っている仏教用語。それだけ日本人の生活に溶け込んでいるということです。

日本には古来、修験道の世界があります。修験道の修行者は山伏の格好をして山岳修行をします。一般の人が参加できる「体験コース」もありますよね。

修行中、山道を歩く際には「ざ~んげ、ざんげ、六根清浄(ろっこんしょうじょう)」と唱えますが、この「ざんげ」は「懺悔」と書く仏教用語です。

「懺悔」と聞くとキリスト教を思い浮かべる人も多いと思いますが、キリスト教では許しを請う儀式は「告解」「告白」「悔悛」であり、「懺悔」とは言わないそうです。

仏教の「懺悔」の「懺」はサンスクリット語の「カーマ」の音写で、「忍」という意味が込められているそうです。「悔」は同じような意味を表す漢語。つまり、同じ意味の漢字が重なっているのが「懺悔」です。

仏教では「ざんげ」ではなく「さんげ」と読み、罪を告白して仏様に許してもらうことです。他の宗教にも同じような行為がありますが、仏教の「懺悔」は日常用語として浸透しています。

「懺悔文(さんげもん)」とは、自分の犯した罪や過ちを仏様に告白して、悔い改める言葉です。「懺悔文」を唱えたり写経したりして「懺悔」します。

有名な「懺悔文」が「略懺悔」であり、次の七言四句の「偈文(げもん)」です。「偈文」はお経を唱える前に読むものであり、お寺の法要で聞いたことがある人も多いと思います。

「我昔所造諸悪行(がしゃくしょぞうしょあくごう)」「皆由無始貪瞋癡(かいゆうむしとんじんち)」「従身口意之所生(じゅうしんくいししょしょう)」「一切我今皆懺悔(いっさいがこんかいさんげ)」の七言四句です。意味は次のとおりです。

私は昔からたくさんの悪いことをしてきました。そのすべてが「貪(どん)」「瞋(しん)」「癡(ち)」によるものです。いつの間にか「むさぼり」「怒り」「愚かさ」によって悪い行いをし、悪態をつき、迷いが生じ、悪が積み重なっています。今、それら全てのことを懺悔します。

この七言四句、暗記して自然に口から出るようになると、心穏やかになれそうですね。「懺法(せんぼう)」「悔過(けか)」という儀式があります。自ら知らず知らずのうち行った諸悪を懺悔して、お互いの心の中にある「むさぼり」「怒り」「愚かさ」の三毒を取り除き、自分の心を静め清らかにする儀式です。中世には宮中行事として行われていたそうです。

ほかに「布薩(ふさつ)」「自恣(じし)」という儀式もあります。「布薩」は半月ごとに集まって、「自恣」は夏安居(げあんご)の終りの日に集まって、罪を告白し、互いに批判し、戒を唱えて罪障を数え、赦しを受けます。
七言四句を唱えるのは大変そうですが、「ざ~んげ、ざんげ、六根清浄」は覚えられそうです。いや、安きに流れるこの怠け心も「懺悔」ですね。ではまた来月。