皆さん、こんにちは。春が待ち遠しい季節になりましたが、まだまだ寒い日が続きます。くれぐれもご自愛ください。
日常会話の中に浸透している仏教用語をお伝えしているかわら版。仏教用語がたくさん定着しているのには驚きます。
三月と言えば、受験シーズンもいよいよ終盤。受験生の皆さん、頑張ってください。縁起を担いでお寺や神社にお参りにいったり、験(ゲン)担ぎで何か縁起の良さそうなことをしたり、受験生だった頃を思い出します。
この「縁起」も仏教用語です。何となくそんな語感が伝わってきますが、サンスクリット語の「プラティートヤ・サムウトパーダ」という言葉が漢訳されて「縁起」となりました。
「プラティートヤ」は「何々に縁(よ)って」「何々に依存して」という意味。一方、「サムウトパーダ」は「共に生起(しょうき)する」「共に発生する」という意味です。
つまり、「縁起」とはいろいろなことが「縁」として関係し合って「起」きているということ。
「縁起」が良いのは、たまたま運が良くて好事が起きているのではなく、そうなるべくして起きたこと。「縁起」が悪いのも、たまたま運が悪くて悪事が起きているのではなく、そうなるべくして起きたことです。
自分の身の回りに起きる「縁起」が良いことも、「縁起」が悪いことも、すべてそこまでの自分の行いや様々な自分の身の回りの出来事の積み重ねとの関係で起きていることを諭しています。
英語に「ラスト(last)ストロー(straw)という言い方があります。「ラスト」は「最後」、「ストロー」は「藁(わら)」。「ラストストロー」は「最後の一本の藁」です。
馬や駱駝(らくだ)や牛は重い荷物を運びますが、さすがに限界があります。限界ギリギリに達している時には、「最後の一本の藁」を背中に載せると、力尽きて立っていられなくなります。
「ラストストロー」は力が尽きるきっかけに過ぎず、それまでの重い積み荷が力が尽きる原因です。つまり、何かが起きる時には、そうなる原因が積み重ねって起きるのであり、急に、あるいは偶然に起きるのではないことを諭す英語の慣用句です。
「縁起」が良いのも悪いのも、それまでの積み重ねの結果。「縁起」が良いことをすれば好事が起きるのでも、「縁起」が悪いことに遭遇したので悪事が起きるわけでもありません。
コツコツとした努力、日頃からの行いの結果として、「縁起」が良いことも悪いことも起きるのです。
そのことが腹に落ちると、毎日毎日の積み重ねが疎かにできません。そのことを諭す言葉が「日日是好日(にちにちこれこうじつ)」。毎日が良い日となるように、日々最善を尽くしなさいということです。
「縁起」が良くなるように「日日是好日」、頑張ります。それでまた来月まで、お元気でお過ごしください。合掌。