【第218号】三河新四国八十八ヶ所霊場8

皆さん、こんにちは。先月は豪雨、今月は異常な猛暑。健康にはくれぐれもお気をつけください。

今年のかわら版は 三河新四国八十八ヶ所霊場についてお伝えしています。さて、今月は岡崎市から豊川市に入ります。

近藤勇首塚

三十三・三十四番から国道一号線を南東方向にさらに約五キロメートル進むと、旧松東海道五十三次のひとつ本宿近くにあるのが別格三十五番、大神光二村山法蔵寺。浄土宗西山深草派のお寺です。背後に二村山を擁しています。

当寺は文武天皇(六八三~七○七年)の祈願所として出生寺という寺号を賜っていた古刹。

一三八七年(嘉慶元年)、松平親氏(松平八代の初代、家康の先祖)が諸堂宇を再建した際に法蔵寺に改名しました。

徳川家康が幼少期(竹千代時代)に当寺で文字を学んでいたことから、手習い用の紙を乾かすために利用した御草紙掛松があります。

当寺には新撰組隊長、近藤勇の首塚もあります。筆者も当寺を訪問した際にそれを聞き、「どうしてかな」と不思議でした。

幕末、近藤勇は甲斐の国や勝浦で官軍に敗れて捕縛され、武蔵板橋で斬首。その首は京都三条河原でさらし首にされました。

伝承によれば、その首をかつての同士、斉藤一(別名・山口二郎)が奪い、新撰組ゆかりの宝蔵寺(新京極裏町)の称空義天和尚に埋葬を頼んだそうです。

しかし、同和尚はその直前に法蔵寺三十九代貫主に転任が決まっていたことから、近藤勇の首を密かに京都から当地に運び、首塚をつくって供養したそうです。

ご本尊(三十五番)阿弥陀如来

ご詠歌 空海の 築きし庵 二村の 大悲まします 六角の堂

源義経と浄瑠璃姫

二十七・二十八番から約三キロメートル。再び旧街道を南下し、岡崎城を右側に眺めながら名鉄名古屋本線を越えて左に曲がり、六所神社に隣接する二十九番、 金實山安心院。曹洞宗のお寺です。

当寺の前身は 源義経建立の妙大寺。義経がまだ牛若丸の頃、奥州下向の折に知己となった三河国矢作宿の浄瑠璃姫の菩提を弔うために寿永年間(十二世紀末)に建てたと伝わります。

兵火で荒廃したものの、一四三九年、六名影山城主(岡崎市)の城主であった成瀬国平が再興し、安心院として開山しました。成瀬氏はのちに犬山城主となります。

ご本尊は源義経が日夜拝んでいたと言われる丈約二十センチの十一面観世音の木彫座像です。

三十番は、本堂左に祀る金峯殿です。

ご本尊(二十九番)十一面観世音

ご本尊(三十番)千体地蔵尊

ご詠歌 みめぐみに だかれやすけき 心こそ かね宝にも まさりこそすれ

隠居寺

三十五番法蔵寺の山門に登る階段の下に、三十六番、二村山勝徳寺があります。やはり、浄土宗西山深草派のお寺です。

法蔵寺は別格と名のつく大寺院でしたので、かつて寺内に賀勝軒という庫裏と威徳院という別院があり、法蔵寺の住職が交替すると、前住職が賀勝軒や威徳院に移り住んだそうです。言わば隠居寺。

一九五七年(昭和三十二年)、賀勝軒と威徳院が統合され、現在の勝徳寺になりました。

ご本尊(三十六番)阿弥陀如来

ご詠歌 ありがたや 光明真言 となえつつ 登りておがむ 二村の山

船山古墳

三十六番から再び国道一号線に戻って南東方向に約十キロメートル、豊川市に入って追分交差点を左に進むと国府(こう)上宿の集落に三十七番、天神山法厳寺があります。真言宗醍醐派のお寺です。

永禄年間(九六八~九八九年)に三河太守、大江定基の祈願所として寺禄を与えられていたそうです。

すぐ近くに船(舟)山古墳。東三河地方で最大規模の古墳であり、五世紀後半頃の築造と言われています。

被葬者は明らかではありませんが、雄略天皇時代に穂国造(ほのくにみやつこ)に任命された 菟上足尼(うなかみのすくね)の墓所とする説があります。因みに、穂国は 邪馬台国説もある東三河にあった古代国家です。

古墳は姫街道(東海道脇往還)沿いに位置し、当地は 国府、国分寺、国分尼寺が集まる律令制下の三河国中心地。

かつては古墳の周りに十三ヶ寺が建ち並んでいました。法厳寺もその一寺を縁起とするものかもしれません。三十八番は境内の金剛殿です。

ご本尊(三十七番)不動明王

ご本尊(三十八番)弘法大師

ご詠歌 詣るよう 詣れる人の 神の宿 光をうくる 法厳の寺

女ぎつねのしかえし

三十八番から姫街道を東に進むこと約五キロメートル、三十九番は小林山快泉院 。真言宗醍醐派のお寺です。

一六八九年(元禄二年)の開創時は快楽寺と呼ばれた当寺は古くから近隣集落の祈祷所として親しまれ、江戸時代には寺子屋も開いていたそうです。

雌狐を驚かせた住職が仕返しをされる「女ぎつねのしかえし」という民話が伝わっています。

四十番は本堂南にある遍照殿です。

ご本尊(三十九番)不動明王

ご本尊(四十番)弘法大師

ご詠歌 野をもすぎ 林も行きて 快楽の 不動の威力 たのまぬはなし

豊川稲荷の妙厳寺

来月は三河新四国の別格霊場、圓福山妙厳寺に行きます。豊川稲荷 として知られる妙厳寺。曹洞宗永平寺派のお寺です。乞ご期待。