皆さん、こんにちは。今日はご祥当。いよいよ春本番ですね。さて、紙上遍路のかわら版。残すは二十七ヶ寺。頑張って打ち通しましょう。今月も元気に出発です。
伊予水軍菩提寺
六十一番から約一・九キロメートル、六十二番は天養山宝寿(ほうじゅ)寺。
天平年間に聖武天皇が諸国に一の宮を造営。伊予一の宮の大山祇(おおやまずみ)神社の別当寺として創建されたのが縁起。
弘法大師がこの寺に長く逗留した折、難産に苦しむ国司夫人に境内の玉の井の水を加持祈祷して与えると、夫人は無事出産。
以来、お大師様が彫ったご本尊、十一面観世音菩薩は安産の観音様として信仰を集めました。
瀬戸内海の大三島(おおみしま)にある大山祇神社は伊予水軍(村上、河野、越智)が信仰。別当寺である宝寿寺は伊予水軍の菩提寺でもありました。
吉祥天マリア像
六十二番から約一・三キロメートル、六十三番は密教山吉祥(きちじょう)寺。
お大師様がこの地を巡錫した際、光を放ち、霊気に満ちた檜に出会い、この霊木で毘沙門天を彫像。四国霊場の中で毘沙門天がご本尊の札所は吉祥寺だけです。
本堂の手前には高さ一メートルほどの成就石(じょうじゅいし)。石の中央に開いた穴に金剛杖を通すと願いが成就すると言われています。
寺宝として知られる高さ約三十センチ、純白の高麗(こうらい)焼のマリア観音像。
土佐沖で難破したイスパニア船の船長が長宗我部元親に寄贈。元親はマリア像とは知らず、吉祥天のように美しい観音像として伝承。
キリスト教弾圧の難も逃れ、寺宝として今日に伝わっています。
お山開きの「なんまいだ」
六十三番から約三・三キロメートル、六十四番は石鉄山(いしづちざん)前神寺(まえがみじ)。
先月の六十番、石鎚(鉄)山(いしづちさん)横峰寺(よこみねでら)でも登場した石鎚山。前神寺は石鎚山の麓にあります。
修験道の祖、役行者(えんのぎょうじゃ)は修行中に阿弥陀如来が蔵王権現となって現れたのを感得。
役行者は阿弥陀如来の尊像を彫り、それを祀ったのが開創の縁起。
お大師様も二度入山。参籠して虚空蔵求聞持法などを修法。
桓武天皇は病気平癒を勅願。成就の報恩に前神寺の寺名を下賜しました。
前神寺は山頂の石鎚権現の別当寺。山頂近くには奥前神寺と呼ばれる分寺。麓の本寺は別名、里前神寺。
毎年七月のお山開きには、里前神寺から黒瀬峠を越えて奥前神寺まで、白衣姿の数万人の信者が法螺貝の音とともに「なんまいだ(南無阿弥陀仏)」を称えて登ります。
子宝杓子
六十四番から約四十六キロメートル、六十五番は伊予最後の霊場、由霊山(ゆれいざん)三角寺(さんかくじ)。
お大師様が三角の護摩壇を築いて護摩を焚き、降伏(ごうぶく)護摩秘法を修法。この護摩壇跡が庫裡と薬師堂の
にある三角(みすみ)池の中の島に現存。寺号はこの護摩壇に由来します。
寺は標高約四百三十メートルの平石山の中腹。寺号に因んで山は別名、三角寺山。桜の名所です。
ご本尊、十一面観世音菩薩は開運厄除け・安産子安の観音様として信仰を集めています。
寺で子宝杓子(しゃもじ)を授かり、夫婦で仲良く食事をすると子宝に恵まれ、子どもを授かった後にその杓子と新しい杓子を奉納してお礼参りする習わしです。
四国高野
来月からいよいよ讃岐(香川)、涅槃の道場に入ります。六十六番は阿波(徳島)と讃岐の境にある雲辺寺。別名、四国高野。乞ご期待。