【第93号】仏教伝来3(第一のルート、南の海路)

皆さん、こんにちは。今日はご祥当=弘法大師の年命日。ご祥当が来るといよいよ春本番ですね。

さて、仏教伝来をお伝えしている今年のかわら版。今月は、スリランカ、東南アジアに伝わった仏教です。

仏教伝来の三つのルート

インドで誕生した仏教は、三つのルートでアジア全域に広がっていきました。

第一は、南の海路を経て、スリランカや東南アジアに向かったルート。

第二は、北の陸路。ヒマラヤ山脈を越えて、ネパールやチベットに至るルートです。

第三は、西北の陸路を経て、ヒンズークシ山脈やカラコルム山脈を越えて、シルクロード、中国に伝わったルート。

今月号では、第一のルートをご紹介します。

マヒンダとサンガミッター

インドを統一したアショーカ王。仏教を広めるために周辺諸国に伝道師を派遣しました。

南の島国であるスリランカには、息子のマヒンダと娘のサンガミッターが渡り、上座部(小乗)仏教を伝えました。後に南伝仏教と呼ばれます。

以後、仏教徒のシンハラ族とヒンズー教徒のタミル人の間で何世紀も対立が続き、今日に至っています。

東南アジアはシークロス

東南アジアにはスリランカ経由で上座部仏教が伝わるとともに、別のルートもありました。

紀元前二世紀頃より、南インドと中国沿海部の交易が始まり、中継地点の東南アジアには様々な文化や宗教が伝わりました。言わば、海の交差点=シークロスです。

ミャンマーでは、上座部仏教だけでなく、大乗仏教、ヒンズー教が混合した信仰が普及。そうした中、九世紀のアノーヤター王が上座部仏教を国教と定めました。

六世紀に創建されたヤンゴン(ラングーン)のシュエダゴンパゴダ(仏塔)にはお釈迦様の髪が祀られています。

アンコールワット

カンボジアのルーツのクメール朝は、ヒンズー教と大乗仏教の混合信仰。

九世紀のインドラ・ヴァルマン一世の時に首都アンコールトムの建設が始まり、都の南に建てられたのがアンコールワット。ヒンズー教の神々、大乗仏教の菩薩が入り交じって祀られています。

十四世紀になるとタイのアユタヤ朝が侵入。一四三二年、クメール朝はついにアンコールトムを放棄して滅亡。これを契機に、タイから上座部仏教が伝わりした。

そのタイに上座部仏教が伝わったのは十一世紀であり、スコタイ朝のラームカムヘン王が国教としました。

ボロブドールの仏塔

インドネシアでは、紀元前後からジャワ島、スマトラ島を中心に普及。ヒンズージャワ文化と言われるほどヒンズー教の影響が強く、その代表がボロブドールの仏塔。

都には千人以上の僧が修行する寺院もあり、中国からインドに渡った義浄(ぎじょう)が行き帰りに滞在。南海寄帰内法伝(なんかいききないほうでん)という本を著しました。

十四世紀になると、ジャワ島にイスラム教が台頭。仏教徒はバリ島に逃れ、バリヒンズー文化に進化しました。

次回はチベットのラマ教

来月号は第二の北のルートをお伝えします。とりわけ、チベットでは仏教がラマ教と呼ばれるようになります。乞うご期待。