【第91号】仏教伝来1(仏教伝来)

皆さん、明けましておめでとうございます。足かけ九年目に入ったかわら版。去年のお釈迦様の生涯に続いて、今年は仏教伝来をお伝えします。

根本分裂と枝末分裂

紀元前四六三年に誕生したお釈迦様。八十歳の紀元前三八三年に入滅しました。

入滅直後に五百人の阿羅漢(高弟)が集まって開いた第一結集(けつじゅう)。教えの継承の始まりです。

その約百年後に開かれた第二結集。戒律の解釈を巡って大衆部(だいしゅぶ)と上座部(じょうざぶ)に根本分裂。

前者は大乗仏教(大衆のための仏教)に発展。インドから北に伝わったために北伝仏教と呼ばれました。

一方、後者は僧(修行者)が自ら悟るための小乗仏教のルーツ。南に伝わって南伝仏教となります。

その後、仏教は多くの部派に枝末分裂(しまつぶんれつ)し、部派仏教の時代となりました。

アショーカ王と仏伝文学

仏教がインド全土に広まるのは紀元前二六八年に即位したマウリヤ朝のアショーカ王のおかげと言えます。

アショーカ王はインド統一の過程で体験した悲惨な戦争への反省から仏教に傾倒。信仰の対象となっていた仏舎利(お釈迦様の遺骨)を八万四千の仏塔(ストゥーパ)に祀り直し、仏教はインド全土に広がりました。

仏塔を参拝する信者はお釈迦様のことを知りたいと思ったことでしょう。しかし、僧は仏教の難しい教義(アビダルマ)などの修得に没頭していたため、お釈迦様の生い立ちなどのエピソードは仏塔守(言わば在家信者)が口伝で語り継ぎました。

その中で、お釈迦様は徐々に神格化、超人化され、仏伝(ぶつでん)文学と言われる物語に発展していきます。

インドではもともと輪廻転生(りんねてんしょう)という考え方が普及していました。

仏伝文学の中では、スメーダというバラモン(司祭)階級の青年が「遠い未来に悟りを開いて仏になる」との予言を授けられ、何回も輪廻転生した後に兜率天(とそつてん)に昇ります。
兜率天でのの生を終える時、六本の牙を持つ白象となってお釈迦様の生母であるマーヤー夫人の胎内に宿りました。

ジャータカ物語

お釈迦様を巡る仏伝はインドの民話や伝説の主人公と混然一体となり、やがてお釈迦様の前世の物語であるジャータカ物語が誕生します。日本では、本生譚(ほんじょうたん)、本生話(ほんじょうわ)と言われています。

お釈迦様の前世である国王が、鷲に狙われた鳩を救うために自分の体の肉を差し出すといった説話の類です。

仏教が世界各地に伝わる過程で、ジャーダカ物語は各地の民話等に影響を与えていきました。

例えば、イソップ物語やアラビアンナイト。日本でも、今昔(こんじゃく)物語や宇治拾遺(うじじゅうい)物語が影響を受けていると言われています。

いずれにしても、仏教が広がっていく中で、お釈迦様はさらに神格化、超人化されていきます。

大乗仏教

裕福な王侯貴族に保護されて僧院にこもって教義を勉強していた僧たちの目指した上座部(小乗)仏教。

それに対して、仏塔守(在家信者)を中心に誕生した大乗仏教。

来月は上座部仏教と大乗仏教の違いと、インドでの仏教の顛末をお伝えします。乞ご期待。