皆さん、こんにちは。お釈迦様の生涯をお伝えしてきた今年のかわら版も最終回です。締めくくりはお釈迦様の教えです。
八万四千の法門と中道
二十九歳で出家して八十歳で入滅したお釈迦様。人はなぜ生老病死に苦しむのか、人とは何なのか、そして如何に生きるべきか。お釈迦様の人生はそれを追求する旅路でした。
仏教は来世のことを教える道標のようにも思えますが、本来は現世の生き方の指針です。そして、来世に旅立った先祖と向き合うことで自分自身の生き方を省みます。
八万四千の法門とも言われるお釈迦様の教え。ひとり一人の個性に合わせた非常にたくさんの教えがあることを意味しています。
お釈迦様が最初に悟ったのは中道。快楽に満ちた生活、身を削る苦行、いずれからも安寧は得られず、極端な生き方は無益であると教えています。
四諦八正道と四苦八苦
ではどのような生き方をすればよいのでしょうか。その指針のひとつが四諦八正道(したいはっしょうどう)と言われています。
苦諦(くたい)はこの世には必ず苦があること、集諦(じったい)は苦には必ず原因があること、滅諦(めったい)は原因を滅すれば苦も滅すること、道諦(どうたい)は苦を滅する方法を示しています。「諦」という漢字は「あきらめる」という意味ではなく「明らかにする」という含意です。
苦を滅する方法が八正道。正しい生き方に近づくための姿勢を諭す、正見、正思惟、正語、正業、正命、正精進、正念、正定の八つです。
ちなみに、苦は生老病死の四苦に加え、愛別離苦(あいべつりく=愛する人との別れ)、怨憎会苦(おんぞうえく=会いたくない人との遭遇)、求不得苦(ぐふとくく=欲しいものが得られない)、五薀盛苦(ごうんじょうく=満たせない欲望)を加えて四苦八苦と言います。
因縁と四法印
重要な教えのひとつに因縁があります。あらゆる出来事は結果を招く因と、それと関連する様々な縁によって生み出されるという因縁生起(いんねんしょうき)の考え方です。
また、四法印(しほういん)という教えも身にしみます。諸行無常(しょぎょうむじょう)は、全てのことは変化していくことを意味し、物事にこだわらない心の持ちようを諭しています。
諸法無我(しょほうむが)は、全てのことには諸法や因縁で結ばれており、自分と関係がない事象はないことを教えています。ひとりよがりの考え方や言動は、思わぬところでさまざまな影響を及ぼすことでしょう。
涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)は、迷いのない生き方をすれば、平穏で安定した状態となれることを教えています。そして、迷いのない心になるためには、諸行無常と諸法無我を悟る必要があります。
そして、そもそも生きるとは一切皆苦(いっさいかいく)。世の中のことは基本的には苦であり、それを前提にして心を磨かなければならないことを諭しています。
諸行無常、諸法無我、涅槃寂静、一切皆苦をあわせて四法印と言います。
日本への仏教伝来
御釈迦様の生涯をお伝えしてきました今年にかわら版。ご愛読ありがとうございました。来年は、日本への仏教伝来をお伝えします。乞うご期待。それでは、良い年をお迎えください。