【第80号】お釈迦様の生涯2(お釈迦様の悩み)

皆さん、こんにちは。春が待ち遠しいですが、まだまだ厳い日が続きます。くれぐれもご自愛ください。お釈迦様の生涯をお伝えする今年のかわら版。今月はお釈迦様の悩みです。

アシタ仙人の涙

シャークヤ国の都はカピラヴァスツ。お釈迦様の父、シュッドーダナ王の居城はカピラ城と言いました。

王子の誕生で沸くカピラ城を、ある日、ヒマラヤ山麓に住む予言者アシタ仙人が訪ねてきました。

アシタ仙人は王子を見ると落涙。シュッドーダナ王が理由を尋ねると、「この王子は尊い運命の下に生まれました。王位を継げば世界を統一する転輪聖王(てんりんじょうおう)となり、出家すれば悟りを開き、人々を導くでしょう。年老いた私は、王子が立派に成長するのを見届けられないのが悲しいのです」と答えたそうです。

お釈迦様の幸せな生活

お釈迦様の母、マーヤー夫人は産後の肥立ちが悪く、一週間後に亡くなってしまいました。

シュッドーダナ王は、お釈迦様の養育のことも考え、マーヤー夫人の妹、マハープラジャーパティを後妻に迎えました。

シュッドーダナ王とマハープラジャーパティ夫人の間には、お釈迦様の異母弟となるナンダが生まれました。のちに、ナンダはお釈迦様の高弟となります。

お釈迦様は誕生直後に生母を亡くしたとは言え、家族に恵まれ、何の不自由もない幸せな生活を送っていました。

カシミヤのルーツであるカーシー(インド古代十六大国)産の高級織物の衣服をまとい、冬、夏、雨期用の三つの宮殿を与えられ、大勢の召使や家臣に囲まれ、悩みとは無縁と思えるお釈迦様の暮らしぶりでした。

シュッドーダナ王の不安

シュッドーダナ王はお釈迦様の成長に目を細めつつも、アシタ仙人の予言がずっと気になっていました。

長じるにつれ、聡明で思慮深い王子は物思いにふけることが多くなりました。「いつか出家すると言い出すのではないか」。シュッドーダナ王の不安は高まります。

ところで、王子の思慮深い性格の形成に一役買ったのが、シャークヤ国の田園風景だったと言われています。

この世の無常

シャークヤ族は農耕民族であり、シャークヤ国は農業国家でした。

子どもの頃から田園風景を眺めて育ったお釈迦様。

土の中に生息する虫を小鳥がついばみます。虫をくわえて飛び立った小鳥が鷲(わし)に襲われます。そして、その鷲もやがて屍となり、他の動物の餌となり、土の栄養にかえります。

こうした自然の摂理を日頃から身近に感じていた王子は、生きるために食を満たさなければならず、生あるものは必ず滅するという現実を感得し、物思いにふける日々が増えていったそうです。

若くしてこの世の無常を感じ、悩みは深まります。

カピラ城内の木陰で日々静かに瞑想する王子。シュッドーダナ王の不安は頂点に達し、王子の関心をほかに向けさせようとします。

ヤショーダラーと四門出遊

そこで、シュッドーダナ王はお釈迦様にヤショーダラーという美しい妻を迎えさせます。

来月はお釈迦様の新婚生活と、出家の契機となる四門出遊(しもんしゅつゆう)のお話です。乞うご期待。

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