【第60号】織田家の菩提寺「桃巌寺」と四諦八正道

皆さんこんにちは。おかげさまでかわら版は今月で満五年、第六十号を迎えました。ご愛読いただいている皆様に心より感謝申し上げます。覚王山周辺の名刹を紹介している今年のかわら版。今月は本山の桃巌寺(とうがんじ)です。

(*)カッコ内は参照号

織田信秀の菩提寺

織田家の居城、末森城(五十八号)。織田信長の父、信秀が日泰寺の東、現在の城山八幡宮の場所に築いたお城です。その信秀の菩提寺が泉龍山桃巌寺。本山にある曹洞宗のお寺です。信長の弟、信行が父を弔うために建立。もともと末森城のすぐ南にありましたが、一七一五年に現在地に移転。寺号は信秀の戒名、桃巌に因みます。

弁天像(眠り弁天)を祀っているため、別名、名古屋弁天、または東山弁天とも言います。眠り弁天はお正月しか拝観できません。弁天とは七福神のひとつ、弁財天のこと。商売繁盛、芸事の神様として信仰されており、桃巌寺にもご商売をされている方や芸能人が参拝するそうです。本堂には参拝した芸能人の写真がたくさん飾ってあります。

威風堂々、名古屋大仏

桃巌寺のもうひとつ名物は名古屋大仏。台座を含めて高さ十五メートルもある大きな仏像です。大仏の周囲を十一頭の象が囲んでいます。昭和六十二年、大仏師の長田晴山氏が制作。名古屋オリンピックにあわせて開眼する予定だったそうです。残念なことに名古屋オリンピックは幻に終わり、名古屋大仏の威風を世界に発信する機会も幻となりました。

曹洞宗の基本は座禅

弘法大師空海が開いた真言宗では、密教の教義(教相)と作法(事相)の両方を学ぶことによって悟りに至ると教えられています。一方、桃巌寺の曹洞宗が重視するのは座禅。悟りを開くためには、読経や礼拝ではなく、ただひたすら座禅を行うべきであるという只管打坐(しかんたざ)の教えを基本にしています。

開祖は道元。比叡山で天台教学(五十九号)を学び、中国(唐)に留学。帰国後、菩提樹の下で座禅をくんで悟りを開いたお釈迦様に倣えと説き、曹洞宗を開きました。

四諦八正道

座禅によってお釈迦様が開いた悟りは、ひと言で言えば苦を滅すること。生きることは基本的には苦であり、それを克服するために、苦諦(くたい)・集諦(じったい)・滅諦(めったい)・道諦(どうたい)の四諦(四つの真理)を説きました。

苦諦は苦を知ること、集諦は苦の原因を明らかにすること、滅諦は苦を取り除くこと、道諦は苦を取り除く方法のことです。その方法としてお釈迦様が示されたのが八正道(はっしょうどう)。正しく物事を見る正見(しょうけん)、正しい道理を考える正思(しょうし)、正しい言葉を語る正語(しょうご)、正しい行いをする正行(しょうぎょう)、正しい生活をする正命(しょうみょう)、正しい努力をする正精進(しょうしょうじん)、正しい道を念ずる正念(しょうねん)、精神を安定させる正定(しょうじょう)の八つです。

お釈迦様の教えを、入滅後に書き記したのが法華経。四諦八正道は法華経の真髄のひとつと言えます。

次回は善篤寺

来月号では善篤寺についてお伝えします。桃厳巌と同じく曹洞宗のお寺です。