【第54号】仏教の三つの宝と三宝荒神

皆さんこんにちは。今年も残りあとわずか。お風邪などひかぬよう、くれぐれもご自愛ください。昨年始めよりいろいろな仏像についてお伝えしてきましたかわら版。このシリーズは今回でひと区切り。菩薩・如来・明王・天部のどれにも属さないその他の仏像の締めくくりは三宝荒神(さんぽうこうじん)です。

仏教の三つの宝と三宝荒神

仏教は仏・法・僧の三つの宝=三宝によって成り立っています。仏は悟りを開いた者、つまりお釈迦様そのものです。法はお釈迦様の教え。人の個性に応じて諭したことから、多様な教えがあるという意味で八万四千の法門があると言われています。そして、僧はお釈迦様の教えを伝える人たちです。仏教を学ぶことは三宝に従うこと。したがって、仏教を信心することを三帰依とも言います。その三宝を護るのが三宝荒神。三宝に逆らう者を戒めるために怒った顔(憤怒相)をしており、弓矢などの武器を携えます。

また、火を操ることから竈(かまど)の神としても信仰されており、転じて台所の守護、さらには家内安全のご利益があるとも信じられています。

三宝荒神の納鶏

名古屋の三宝荒神といえば大須の天寧寺。織田信長がわが子の成長を祈願して三宝荒神を祀り、守鶏絵馬を奉納したことが縁起です。鶏は夜に鳴かないことから子供の夜泣き止めのご利益があると言われています。

天寧寺名物は名古屋の郷土玩具のひとつ「守り土鶏」。「守りおんどり」と「守りめんどり」の雌雄一対です。大須にお出かけの際には一度お立ち寄りください。

織田家は覚王山のご近所さん

ところで、織田家はご当地、覚王山界隈に縁が深いのはご存知でしょうか。信長の父・信秀の居城は覚王山から東に五百メートルほどの末森城。信秀が駿河(静岡)の今川氏の侵攻に備えて築きました。城跡は城山八幡宮になっています。末森城は次男・信行(信長の弟)に譲られ、これも兄弟喧嘩の原因になりました。信行の死後、末森城は廃城。地名もいつしか末森から末盛へ。信秀と信行の菩提寺は本山・桃巌寺です。縁日の帰りに散策してみてください。

来年の守り本尊は阿弥陀如来

さて、来年の干支は亥。かわら版第四十二号でもお伝えしましたように、干支にはそれぞれ守り本尊がついています。十二支に対して守り本尊は八つですから、同じ守り本尊が続くことがあります。亥の守り本尊は今年(戌)と同じ阿弥陀如来。

ここ覚王山霊場には、守り本尊が勢ぞろいしている場所があります。本堂手前東の階段を下りたB地区の中にあります。是非お立ち寄りください。衆生を慈悲の心(光)で照らす阿弥陀如来。光と長寿の仏様(第三十九号をご参照)とも言われます。覚王山霊場C地区周辺には、阿弥陀如来をご本尊とする名刹がいくつもあります。尋盛寺(浄土宗)、台観寺(天台宗)、相応寺(浄土宗)などです。台観寺には、弘法大師作と言われる大黒天も祀られています。

来年は覚王山周辺名刹シリーズ

さて、かわら版も来月から足かけ七年目に入ります。来月号からは覚王山周辺の寺社仏閣、名刹シリーズをお伝えしたいと思います。乞うご期待。それでは、良いお年をお迎えください。