【第46号】八大(代)龍王は八部衆

皆さんこんにちは。今月はお釈迦様の誕生月。潅仏会(かんぶつえ=お釈迦様の誕生日の四月八日)は、今月の話題、八大龍王とも関係があります。

八大(代)龍王は八部衆

参道中ほどに、弘法大師の生誕から入定(六十二歳)までの像が祀られた歳弘法があります。その歳弘法の入口に鎮座しているのが八代龍王のおつげの石。表側には八代龍王、裏側には心念の二文字。黄色い座布団の上に鎮座しているおつげの石に悩みを相談すると、処し方のおつげがあると言われています。

八代龍王は八大龍王とも書き、お釈迦様の八つの眷属(けんぞく=従者)である八部衆のひとつ。八部衆はインド古来の異教の神であり、お釈迦様に諭されて仏教を護るようになりました。伝説の火の鳥迦楼羅(かるら)、先月号でご紹介しました夜叉(やしゃ)、天(てん)、乾闥婆(けんだつば)、緊那羅(きんなら)、摩睺羅迦(まごらか)、阿修羅(あしゅら)、龍(りゅう)の八つです。

八大龍王はこのうちの龍のこと。難陀(なんだ)、跋難陀(ばつなんだ)、沙伽羅(しゃから)、和修吉(わしょうきつ)、徳叉伽(とくさか)、阿那婆達羅(あなばたら)、摩那斯(まなす)、優婆羅(うばり)の八匹の龍からなる龍神です。

神仏一体の雨乞いの神様

龍は水中に住む架空の生物。インドでは雨を司る大蛇でしたが、中国、日本では龍となり、雨を降らせるご利益があると言われています。

八大龍王像(画)で有名なのは大阪孝恩寺、奈良法隆寺、そして弘法大師縁の和歌山金剛峯寺。左手に宝珠を盛った鉢を持つ金剛峰寺の善女龍王(画)は、弘法大師が雨乞い祈祷した際に現れたと伝えられています。

東海地方で有名なのは伊勢神宮の鬼門を守る朝熊岳金剛証寺の八大龍王社。弘法大師が修行のために入山したと言われています。

もともとインドの神であり、仏教の守護神でもあることから、神仏一体の信仰の対象となりました。

八大龍王は八岐大蛇?

大蛇、八匹の龍、神様、神宮と聞くと、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)が思い浮かびます。素戔嗚尊=須佐之男命(スサノオノミコト)が退治した大蛇が八岐大蛇。その大蛇の尻尾から出てきたのが天の叢雲の剣(あめのむらくものつるぎ)。その剣は転じて三種の神器のひとつ草薙の剣(くさなぎのつるぎ)と呼ばれ、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)がご当地、熱田神宮に祀りました。

八大龍王社を奉じる伊勢神宮に次ぐ格式の熱田神宮に八岐大蛇縁の草薙の剣があることを考えると、八大龍王と八岐大蛇には因縁があるような気がします。

潅仏会と甘露の水

ところで、お釈迦様が生まれた時に、八大龍王が現れて、甘露の水を口から注いで釈迦の身を清め、誕生を祝しました。その甘露の水は花びらとなって地上に降り注いだことから、潅仏会のことを花供(花まつり)とも言います。潅仏会の今月は、是非、八大龍王をお参りください。

歳弘法の大修復、次回は梵天

さて、八大龍王のおつげの石がある歳弘法。その歳弘法の弘法大師像の傷みが激しくなり、今年から大修復にかかります。歳弘法ではご尊像一体ごとに修復の施主となる奉賛会員を募集するそうです。新しいご尊像の台座には施主の名前が記され、弘法大師と同行二人を体現します。ご関心のある方は、歳弘法で詳細をお尋ねください。

来月号は、インドの神様である天部の中の最高神、梵天についてお伝えします。梵天は仏教の教えを広めるのに大きな功績を残しました。乞うご期待。