【第42号】三毒を取り除く

皆さんこんにちは。早いもので今年も残すところあと十日あまり。一年間、かわら版をご愛読頂きましてありがとうございました。今年の締めくくりに、今回は、孔雀明王(くじゃくみょうおう)についてお伝えいたします。

三毒を取り除く

この明王、その名のとおり、孔雀に乗っているのが最大の特徴です。お釈迦さまの故郷、インドでは、昔からコブラなどの毒蛇が多く、大いに恐れられていました。孔雀はその毒蛇の天敵であり、毒蛇や害虫を喰べる益鳥として大切にされてきました。

そうした孔雀の特徴に因んで、孔雀明王には、人間の持つ貪り、嗔り(いかり)、痴行の三毒を喰らって、煩悩を取り除く功徳があるという信仰が生まれました。

また、孔雀は雨期の到来を告げる鳥、慈雨(じう)をもたらすありがたい鳥とされ、インドの国鳥でもあります。このため、孔雀明王は雨乞いの御利益があると信じられています。

優しく、女性的な表情

前号までにお伝えしましたように、明王と言えば怒りに満ちた恐~い顔、忿怒相(ふんぬそう)が本来の特徴です。

ところが、孔雀明王は、明王の中で唯一、柔和で女性的な表情をしています。そのため、孔雀仏母、孔雀王母菩薩とも呼ばれます。

一面四臂(顔が一つ、腕が四本)のお姿で、四本の腕にそれぞれ倶縁果(ぐえんか)、吉祥果(きっしょうか)、蓮華、孔雀の羽を持っています。倶縁果は気力と体力を高める伝説上の柑橘系の果物。吉祥果は、魔除けに効果があるザクロの実のことです。

孔雀明王とお稲荷さんがご一緒

さて、残念ながら、四国八十八箇所霊場に孔雀明王をご本尊とする札所はありません。

しかし、第四十一番札所の稲荷山龍光寺(いなりざんりゅうこうじ)は、ご本尊(十一面観世音菩薩)の脇侍のひとつとして孔雀明王が祀られています(もうひとつの脇侍は毘沙門天)。

「え、お寺なのに稲荷山?」と思われた方がいらっしゃるかもしれませんね。実は、龍光寺は四国八十八箇所霊場の中で唯一神様と仏様が同居している札所です。

この地を訪れた弘法大師の前に稲穂を背負った老人が現れ、「仏法を守護し諸民に利益せん」と言い残し姿を消したそうです。大師はこの老人こそ五穀豊穣をもたらす稲荷明神であると確信してその尊像をつくり、神仏習合の珍しい札所が誕生しました。

覚王山と一宮にも龍光寺

日本最小の覚王山八十八ヶ所霊場にも、もちろん第四十一番札所、龍光寺の写しがあります。場所は市立商業高校の脇のD地区。一度のお参りで神仏の両方のご加護があるかもしれません。是非お出掛けください。

一宮市にも神仏習合の龍光寺というお寺があります。ご本尊はやはり十一面観世音菩薩。愛知県指定文化財にもなっております。

年明けは天部編

今年の干支(えと)は酉(とり)。酉年の守り本尊は十月号でお伝えした不動明王でしたが、戌(いぬ)年の来年は長寿にご利益がある阿弥陀如来に選手交代。

今年は、年初より仏像をテーマとして、菩薩、如来、明王のお話をお伝えしてきました。年明けからは天部編。をお送りします。インド(天竺)に起源のある天部には、個性豊かな仏像が目白押しです。乞うご期待。

来年もご愛読のほど、どうぞ宜しくお願い申し上げます。それでは良いお年をお迎えください。