【第40号】覚王山の鯖大師

皆さんこんにちは。今年もあとふた月あまり。早いですね。だんだん寒くなります。くれぐれもご自愛ください。

覚王山の鯖大師

日本最小の四国霊場の「写し」、覚王山八十八ヶ所霊場。一番多くの札所がひしめく日泰寺境内東側階段下のB地区に右手に鯖を持った弘法大師像があります。前から気になっていましたので、由来を調べてみました。

別格二十霊場と鯖大師

四国霊場には八十八ヶ所以外に四国別格二十霊場があることをご存知でしょうか。八十八ヶ所と合計して百八つの煩悩を消すためという趣旨で、弘法大師に縁のある番外の二十のお寺によって三十九年前に創設されました。実は、この別格第四番札所の八坂寺(徳島県海南町)に鯖大師が祀られています。

寺近くの法生島で、弘法大師が通りすがりの馬子が持っていた塩鯖を所望しました。馬子は見知らぬ僧を罵り立ち去ろうとすると、引いていた馬が急に苦しみ出しました。馬子は僧が弘法大師と気づき、塩鯖を献上。大師は塩鯖に加持祈祷して海に投げこむと、鯖は生き返って泳ぎだし、馬の病もたちどころに治ったという逸話です。仏心に目覚めた馬子がこの地に庵を造り、鯖を三年間断って祈祷すると病が治るという鯖断ち三年祈願という信仰が生まれました。

如来の教えに導く明王

さて、別名鯖大師本坊と呼ばれる八坂寺には不動明王が祀られ、多くの参拝者の信仰を集めています。

今年の弘法さんかわら版は仏像の話題をお伝えしています。今月はこの明王について勉強してみました。

明王の特徴は何と言っても怒った顔。この表情は、忿怒相(ふんぬそう)と言います。

明王の役割は悩める衆生(しゅじょう)を恐ろしい姿で威嚇して力づくで仏(如来)の教えに導くこと。だから恐い顔をしています。忿怒相は子供を慈しんで厳しく叱る父親の顔を表現したものとも言われています。明王の形相には人々への慈しみと救いの情が込められているのです。

また、顔がたくさんあり(多面)、眼も複数(多眼)、手足も何本もある(多臂多足)のが特徴です。

仏像には千手観音のように多数の顔と腕を持つものが多く、これを○面○臂(○めん○ひ)と言います。千手観音は二十七面四十二臂。スゴイですね。大活躍する人を表す八面六臂という言葉はここからきています。

明王の中心はお不動さん

明王もいろいろ。五大明王、八大明王、十大明王などと言われます。その中心は八坂寺にも祀られる不動明王。

不動明王は普通一面二臂ですが、三面六臂の像もあります。

明王は持物や装飾をたくさん身につけています。不動明王も、右手には魔を払い衆生の煩悩を断つ三鈷剣(さんこけん)。左手には煩悩から抜け出せない衆生を救い上げる羂索(けんじゃく)という投げ縄。背中には衆生の煩悩を焼き尽くす火炎、迦楼羅焔(かるらえん)。迦楼羅(かるら)とは毒を喰らう伝説の火の鳥、ガルーダのこと。不動明王は迦楼羅が羽根を広げた姿を表現しています。

次回は愛染明王

鯖大師の祀られているB地区には、四国別格二十霊場(番外札所)の「写し」もあります。各札所のご本尊像を集めたお堂がありますので、鯖大師とあわせて、是非一度お参りください。

来月号では愛染明王(あいぜんみょうおう)についてお伝えいたします。乞うご期待。