【第33号】弘法大師と弥勒菩薩

皆さんこんにちは。春本番も近づいていますが、まだまだ花冷えの日もあります。くれぐれもご自愛ください。

弘法大師と弥勒菩薩

さて、本日、三月二一日は弘法大師の祥月命日(しょうつきめいにち=年命日)。承和二年(八三五年)の今日、弘法大師は高野山で入定(ご逝去)されました。

今年のかわら版は、仏像の話題をお伝えしています。今月は弘法大師入定に深い関係がある弥勒菩薩(みろくぼさつ)をご紹介させていただきます。

弘法大師は、入定の際、弟子たちに次のように語りました。

曰く、「自分は今から兜率天(とそつてん=やがて仏となるべき人が再び地上に下るまでを過ごす場所)に上り、弥勒菩薩にお仕えする。雲の間から地上をのぞき、弟子たちの行いをよく観察する。そして、弥勒菩薩とともに、すべての人々を救うためにやがて地上に下るだろう」。

何とも気の長い話ですが、現在のところ、弘法大師は弥勒菩薩といっしょにいることになります。

覚王(お釈迦様)の跡継ぎ

弥勒菩薩は、お釈迦様(別名覚王)が入滅して五十六億七千万年後、お釈迦様に代わってこの世に現れ、衆生(人々)を救う未来仏です。

如来は真理を悟った者という意味です。一方、悟りを開く前の姿が菩薩です。数ある菩薩の中でも、弥勒菩薩はいずれ如来となることを約束された唯一の菩薩と信じられています。このことから弥勒如来と呼ばれることもあります。

弥勒菩薩は、五十六億七千万年後にどうやって衆生を救うかをいつも考えています。その思案中の姿が半跏思惟(はんかしゆい)像と言われています。

左足を踏み下げ、右足を曲げて左膝の上に置き、右手で軽く頬杖をついたポーズです。「あぁ、それ知っとるがね」と呟かれた方も多いことと思います。そう、そのポーズをとっているのが弥勒菩薩です。

弥勒菩薩がこの世に現れると、人間の寿命がなんと八万歳になり、五穀豊穣で何ひとつ争いのない理想郷が出現すると信じられています。ありがたいことですね。

弥勒菩薩がご本尊の札所

さて、この弥勒菩薩と縁の深い四国霊場の札所があります。阿波の国(徳島県)の第十四番札所、「盛寿山常楽寺」です。弘仁六年(八一五年)、この地で修行中だった弘法大師のもとに弥勒菩薩が現れ、教えを説いたと伝えられています。弘法大師はすぐに弥勒菩薩像を彫り、常楽寺を建立し、これをご本尊としました。常楽寺は四国霊場の中で唯一弥勒菩薩をご本尊とする札所です。また、ここには、弘法大師が糖尿病に効く薬木を接いだとされる木もあります。

さて、四国霊場の日本最小の「写し」、ここ覚王山八十八箇所霊場の第十四番札所は、奉安塔の東側、C地区に近い西蓮寺にあります。糖尿病でお悩みの皆さん、一度お出かけください。

来月は文殊菩薩と普賢菩薩

年初から菩薩編をお送りしていますが、来月号では文殊菩薩と普賢菩薩についてお伝えします。