【第17号】弘法大使のご 道隆寺の目なおし薬師様

皆さん、こんにちは。すっかり秋も深まり、朝晩は寒々としてきました。くれぐれもご自愛ください。

弘法大師のご利益

さて、先月、弘法さんかわら版をお配りしている時に、ある読者の方から「眼病快癒のご利益がある『目なおしのお札』のこと、知っとる?」と尋ねられました。

これまで、渇水を癒す「弘法水」(第13号)、安産子育て祈願の「子安弘法」(第16号)といった、数々の弘法大師のご利益を紹介してまいりましたが、まだまだ他にもあるようですね。早速、編集部で調べました。

道隆寺の目なおし薬師様

眼病治癒にまつわる弘法大師の偉業は、四国八十八カ所霊場の七十七番札所、桑多山道隆寺(そうださんどうりゅうじ)に言い伝えられています。

この寺のご本尊は、弘法大師が自ら彫った薬師如来像です。ある時、道隆寺を目の不自由な丸亀藩(香川県)士、京極左馬造が訪れ、薬師如来像に快癒を祈願したところ、たちどころに目が見えるようになったそうです。以来、この薬師如来像は「目なおし薬師様」と呼ばれ、今でも多くの方が眼病快癒を願って道隆寺を訪れます。

しかし、この薬師如来像がご開帳されるのはなんと五十年に一度だけ。なかなか貴重なご本尊ですね。

覚王山の「目なおし薬師様」

さて、日本最小の覚王山八十八カ所霊場の七十七番札所はどうなっているのか確かめてきました。日泰寺奉安塔の奥、F地区の一角に道隆寺があり、石造りの薬師如来様が二体並んで鎮座されていました。ちょっと遠いですが、眼がお疲れの皆様、お参りの際に足を伸ばされてはいかがでしょうか。

「目なおしのお札」については、参道の途中で配られていたという話は聞きましたが、それ以上のことはわかりませんでした。何かご存知の方がいらっしゃいましたら、是非編集部にご教示ください。

錫杖と独鈷

栃木県足利市富田には、眼病快癒のご利益のある井戸水があります。渇水に苦しむこの地を訪れた弘法大師が、持っていた杖(錫杖=しゃくじょう)で地面に突いて清水を湧かせ、その水に眼病治癒の願をかけられたそうです。「弘法水」と「目なおし」が結びついているんですね。

温泉や湧水にまつわる弘法大師伝説は、独鈷(とっこ)や錫杖で地面や岩を突いたというものが一般的です。県内でも、鳳来町に弘法大師が全国行脚の際に発見した赤引(あかひき)温泉があります。一度行ってみたいですね。

弘法大師は鉱物博士

水にまつわる数々の伝説は、弘法大師が鉱物学や地理学にも詳しかったことを示しています。鉱脈や水脈を発見する術に長けており、事実、四国八十八カ所霊場のほとんどは鉱物資源や水源の豊富な山に位置しています。

中世の高僧は、希代の文化人や学者であったようです。弘法大師の場合は鉱物博士ですね。