【第8号】覚王山の「札所」は本場四国霊場の「お接待さん」のような役割ですね!

皆さん、こんにちは。立春が過ぎ、桜の開花や若葉が芽吹くのが待ち遠しい季節になりました。いかがお過ごしでしょうか。さて、今月も八十八ヶ所霊場の話題をお伝えします。

四国八十八ヶ所霊場は、1年中いつでも参拝することができます。ところが、ここ覚王山の霊場は、毎月21日の「弘法さん」の縁日の日しか札所は開門・開扉されません。ご存知でしたか? 普段は門や扉に鍵がかかっており、中には、シャッターや雨戸が閉まっている所もあります。実は、大半の札所が、縁日の日だけ参拝ができるように、代々ご近所や、遠方の民家の方がお世話をしてくださっているのです。本場四国巡礼の「お接待さん」のような役割ですね。

「お接待さん」とは、道行く「お遍路さん」たちの食事のお世話、手拭いなどの必需品の差し入れ、道案内、札所の御守などをしてくださる方々のことを、総称してそう呼びます。そもそも、「お遍路さん」とは「弘法大師と同行二人の修行者たち」という意味だそうです。「お遍路さん」こそ、身分、貧富、老若男女の区別のない「真の修行者たち」であり、その人たちに奉仕することも、また有り難い修行のひとつと考えられています。「お接待さん」たちの集まりを「接待構」と言います。因みに、四国一番札所の霊山寺に属する「接待構」のひとつが、和歌山県野上町を本拠地とする「野上接待構」で、今でも約60人の「お接待さん」が交代で霊山寺巡礼者のお世話をしているそうです。何と220年の歴史を誇ると言います。今風に言うと、ボランティアやNPOのルーツのような組織ですね。有り難いことです。

さて、先月の「弘法さん」の日の夕方、一~四番札所をお邪魔してみました。「お接待さん」の皆さんが帰り支度をされていましたが、手際よく荷物を整理して札所の中にしまったり、ご自分の車に積み込んで持ち帰る準備の最中でした。お話を伺ってみると、三代前から札所の御守をしてくださっている方もいらっしゃいました。皆さん、本当にありがとうございます。合掌。

ところで、先月号では、覚王山の八十八ヶ所霊場は、本場四国霊場と同じ名前が付けられていることをご紹介しました。いくつかの札所の「お接待さん」にその事を伺ってみたところ、「ヘェ~、知らんかったわ」というお返事でした。同時に各札所のご本尊の名前を聞いてみたところ、教えて頂いたご本尊名はいずれも四国霊場各札所のご本尊名と同じでした。札所の名前だけではなく、ご本尊の名前も四国霊場と完全に一致しているようです。また、各札所とも、ご本尊のほかに弘法大師像も奉っていらっしゃるそうです。今後、順に調べて行きたいと思います。

一~四番札所の近くにある「千体地蔵」も、やはり「弘法さん」の日だけ堂内に入って参拝ができます。「千体地蔵」は、日泰寺の係りの方が面倒をみてくださっています。お線香の販売、賽銭箱(かごです)の管理、賽銭の両替などをしてくださいます。

今では毎月21日しか参拝できない札所や「千体地蔵」ですが、以前は毎日参拝できたのかもしれません。現に、「かわら版」編集部のスタッフは、子供の頃、放課後に「千体地蔵」の中に入って遊んでいた記憶があります。「鬼ごっこ」や「かくれんぼ」をするには絶好の場所でした。戦後の混乱期には、住む場所に困った方々が札所に寝泊りしていたこともあったそうです。

今後の行事予定

さて、来月(3月)の21日は「御祥当」と言って弘法大師の命日です。各札所で行われる「お接待さん」による茶菓の振る舞いも、いつもより盛大に行われるそうです。4月8日は「花祭り」と呼ばれ、お釈迦様の誕生日です。年に一度だけ拝観できるお釈迦様の像、花で飾られたお釈迦様の像に甘茶を掛ける儀式、有り難くて不思議な甘茶の振舞い等々、いろんな行事があるようです。ご関心のある皆さんは、どうぞ奮ってお運びください。それでは、また来月お会いしましょう。