元日銀マンの大塚耕平(Otsuka Kouhei)がお送りする政治経済レポートです。
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1.連結納税制度論議の摩訶不思議
先週の金曜日(10日)に、グループ企業の損益を合算して法人税を納める連結納税制度の導入法案が国会に提出されました。しかし、政府は、連結納税制度導入に伴う税収減を穴埋めするために、連結納税を選択する企業グループの法人税率を2%上乗せする「付加税(2年間の時限措置)」を盛り込んだため、話が複雑になっています。
連結納税では、グループ内の黒字会社と赤字会社の損益を相殺して課税所得を算出します。赤字会社をたくさん抱えていると現在より税負担は軽くなりますが、逆に、黒字会社がたくさんあると、「付加税」によって税負担が重くなることが予想されています。このため、財界は、「付加税を認めると、優良企業グループが連結納税を選択しなくなり、制度導入の意義が薄れる」と主張し、すでに「付加税」見直しの議論が展開されています。
そもそも、連結納税制度導入の「目的」は何なのでしょうか。議論が錯綜した時は、原点に帰ること、つまり「目的」は何だったのかという視点で考えることが重要です。連結納税制度は、持株会社化などの企業再編を促し、日本の産業競争力を再生させることが本来の「目的」です。
そうであれば、「付加税」の是非は、その「目的」に資するか否かで判断すべきでしょう。「付加税」が、産業競争力再生とは何の関係もないことは明らかです。連結納税制度導入という「ひとつの方程式」で、産業競争力再生と税収減補填という「ふたつの変数」を求めようとしていることが、話を複雑にしている原因です。「方程式の数」より「変数の数」が多ければ方程式が解けないことは、中学生でも知っています。税収減補填が必要ならば、その「目的」は、他の「手段」で実現すべきです。
「目的」と「手段」が整合的でないのは、日本の政治・行政の特徴です。だから、日本の政策はうまくいかないのです。政府(与党政治家と官僚)がこんなことを続けていると、日本の産業競争力再生はますます遠のきます。
2.外務省の「目的」は何か
日本の政治・行政の「目的」と「手段」の関係が正常でないことは、外交でも同じであることが明らかになっています。情けないことです。
中国・瀋陽の日本総領事館で起きた事件の内容については、読者の皆さんもよくご存知のことと思います。領事館や大使館を含む外務省という組織は、外交政策を運営する「手段」に過ぎません。それでは、外務省という「手段」の「目的」は何でしょうか。言うまでもなく、日本国の威信と権威を守り、日本国民ならびに日本国の保護を求める人々を守ることが、外務省という「手段」の「目的」です。「レーゾンデートル=存在理由」とも言えます。
外務省という組織が、「目的」を達成するために有効に機能していないことはもはや明らかです。「目的」達成に有効でない「手段」は、見直すことが必要です。もはや、今の外務省は「存在理由」を失いました。
米国の大使、領事の多く、民間人や政治家からの登用です。任命を受ける際には、「任地では職務を全うするためには命を投げ出しても構わない」という趣旨のことを宣誓するそうです。いったい、日本の今の外務省職員の何人にそういう覚悟があるでしょうか。
「鈴木ムネオ先生に足を向けて寝られない」と言った青木大使も、外交の「目的」が分かっていません。青木氏は、「何人の政治家が鈴木ムネオ先生のようにアフリカのために本気で尽くしたのか」と偉そうなことを言っていましたが、上述のように、日本外交の「目的」は「日本国の威信と権威を守り、日本国民ならびに日本国の保護を求める人々を守ること」です。「アフリカのため」が第一義的な「目的」ではありません。百歩譲って、ムネオの行動が本当に「アフリカのため」になっていたのならともかく、とてもそうのようには思えません。外交までを私物化し、日本国の威信と権威を冒涜していたと考えるのが妥当でしょう。
そんなことも分からない人物が外務省幹部として跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)していることが、読者の皆さんの血税で成り立っているODAを湯水のように無駄遣いしている原因です。
そもそも、青木大使は、あのペルー大使館占拠事件の時の「青木大使」です。占拠された大使館の中でも、他の日本人に対して横柄な態度をとっていたと聞きます。解放後も、自分だけチャーター機(もちろん、国費でしょうが・・・)で帰国したという話もあります。そのあたりの事実関係も、この際、もう1度、国会で明らかにしてもいいかもしれません。
僕は怒っています。皆さんもそうだと思います。皆さん、この際、外務省は解体しましょう。日本国の外交を司る組織と職員は、白紙の状態から作り直しましょう。そのためにも、政権交代をさせてください。それを実現できるのは、皆さん自身の行動しかありません。よろしくお願いします。
3.「毅然とした行動」と「対等なパートナーシップ」
「外交」と言えば、ゴールデンウィークに鳩山代表に随行して沖縄を訪問し、米軍・グレグソン四軍司令官と会談をしてきました(四軍とは、陸海空軍と海兵隊を指します。要は、在日米軍最高司令官です)。四軍司令官が野党第1党党首と単独で会談するのは、戦後初めてではないでしょうか。僕自身は、2月の訪沖時に次いで、グレグソン司令官と会談をしたのは2回目です。
会談では、2月に引き続いて、在日米軍(とくに海兵隊)の縮小と、海兵隊のグアム、ハワイ等への移転を要請してきました。日米地位協定の見直しも要求しました。
日本の「外交」にとって、日米関係は重要です。日本の安全保障は日米関係を基軸として考えていくべきだと思います。しかし、それは米国追従を意味しません。日米が対等な関係になることが前提です。そのためにも、日米地位協定の見直しはどうしても必要です。鳩山代表は、日米地位協定の見直しを「平成の条約改正」と表現していましたが、まったくそのとおりだと思います。
仲の良いはずの同盟国・米国にさえ「対等なパートナーシップ」を要求できない外務省です。中国に対して毅然とした態度を取れるはずがありません。
川口外務大臣は、「これまでも毅然としてきたし、今後も毅然と対応する」と言っていましたが、言葉だけが踊るところは小泉首相にソックリになってきました。言葉はいりません。行動で示してください。
「毅然とした行動」がなければ、「対等なパートナーシップ」は生まれません。米国や中国と「対等なパートナーシップ」を構築するという「目的」を実現できないような外務省なら、もう1度、ゼロから作り直しましょう
(了)