参議院議員・大塚耕平(Ohtsuka Kouhei)がお送りする政治経済レポートです
OKマガジンも150号になりました。ご愛読ありがとうございます。これからも、少しでも読者の皆さんのお役に立つ情報、興味のある情報を提供できるように努力したいと思います。引き続き、よろしくお願いします。前回に続いて、サブプライム問題の深層をお伝えします。
1.三者三様「日本」の事情
先週は日銀の政策決定会合でしたが、サブプライム問題の影響から利上げは見送り。この局面では妥当な対応です。米国FRB(連邦準備理事会、米国の中央銀行)の緊急利下げも奏功し、株安と円高の進行も一段落。市場はとりあえず平静を取り戻しました。
しかし、安心はできません。そもそも、サブプライム問題に端を発した今回の混乱は、一過性のものではありません。世界経済の構造調整の動きです。
過去10数年間、世界経済は金融緩和を前提に動いてきました。主役は日本、中国、米国。それぞれ異なる事情を抱えています。
この間、日本は本当の意味での構造改革に取り組まず、金融緩和という対症療法で対応してきました。構造改革の重要な目的のひとつは、財政赤字を生み出す政策構造や利権構造にメスを入れて財源を捻出。その財源を、新産業育成、経済活性化につながるような新しい政策に投入することでした。
ところが、現実にはそうした取り組みは進まず、15年に及ぶ異常な超金融緩和をベースとした経済運営を継続。その間に金融システム危機があったことも一因ですが、国債管理政策への配慮から意図的に低金利を続け、放漫財政を下支えしています。
この状況を利用したのが円のキャリートレード。低金利の日本で円を調達し、高金利の米国や中国で運用するという動き。円を外貨に換える過程で円安が進み、円安は日本の輸出企業の業績好転につながりました。
2.「中国」と「米国」の事情
一方、輸出大国に成長した中国は膨大な外貨準備を抱えることとなりました。また、中国は、日本のかつてのバブル経済のメカニズムも参考にして金融緩和を継続。ストックインフレによって資産価値を高め、資金力と国富を増やす経済政策を取り続けています。
外貨準備増大と金融緩和政策の結果、中国のジャブジャブのマネーは海外に向いました。
世界経済の牽引車、米国はもともと「双子の赤字」をファイナンスするために金融緩和を経済運営の基本としています。表面上の金利動向だけでは分からないのが米国経済の深層構造です。
しかし、ドルベースの過剰な金融緩和はインフレリスクを高めるため、最近は日本と中国のマネーに依存してきました。
日本、中国、米国。それぞれ事情は異なるものの、足並みを揃えて金融緩和を前提とした経済運営を行ってきた結果が、米国の住宅バブルであり、中国のバブル経済。日本では、円安、輸出企業の業績好転というかたちで現れました。
この微妙なバランスを崩したのが今回のサブプライム問題、米国版のバブル崩壊です。
3.円高は世界経済の警戒警報
サブプライム問題が表面化した直後は急速に円高が進行しました。
低金利の円を調達し、高金利、高運用利回りの外貨で運用するのが円のキャリートレード。今回の円高は円で調達していた資金を返済する動きです。
つまり、運用していた外貨を円に換えて返済する動きが集中し、一気に円買いが進んで円高になります。
かつて円高は日本経済の強さを象徴した時期もありましたが、今回の円高は世界経済の微妙なバランスが崩れている警戒警報。こうした円高が長期間続けば、いずれ日本経済は失速し、その後、今度は一気に円安が進むでしょう。
世界経済は、やがて本格的な構造調整局面を迎えるでしょう。
27日には内閣改造が行われ、9月中旬から国会も始まります。日本経済の潜在リスクを軽減するために、慎重かつ適切な経済運営が必要です。新しい経済閣僚の認識を質し、有意義な国会論戦を行いたいと思います。頑張ります。
(了)